ミッション・ビジョン・バリュー
策定インタビュー
【写真】専務取締役 星野 仁彦 氏
背景・課題
実施した背景や課題感
・経営理念やビジョンがなく、トップの力に依存していた組織を見直し、企業としての「軸」を明確にする必要があった。
・利益の追求だけでなく、社会に貢献する価値観を組織文化として根付かせ、人のために働く意識を醸成したかった。
・企業が永続的に繁栄するために、明確な理念を打ち立てることが必要だった。
・採用時のミスマッチ防止や、会社が苦境に立たされた際に立ち返るべき指針として、ミッション・ビジョン・バリューが求められた。
ミッション・ビジョン・バリュー の導入効果
・ワークを通じて社員同士の絆が深まり、これまでにない一体感と熱意が生まれた。
・採用活動で自社の価値観や方向性を明確に伝えられるようになり、ミスマッチを防げるようになった。
・社内トラブルや問題発生時に立ち返るべき軸ができ、判断に迷うことがなくなった。
・自分たちらしい言葉で作られたミッション・ビジョン・バリューが社員の自信と誇りを育み、独自の組織文化が形成されることが期待できた。
会社紹介
当社は創業56年の運送会社です。昭和43年の創業以来、地域社会に潜在する輸送の需要を満たすために邁進してきました。現在ではトラックを用いた貨物運送業をメインとしながら、旅客運送事業なども展開しています。
なぜミッション・ビジョン・バリュー
を策定することになったのか?
当社は創業から56年以上、トップの力に依存する文鎮型の組織として経営を続けてきました。経営理念やビジョンといった指針はなく、企業としての価値観も存在していませんでした。
しかし、私が今後事業を引き継ぐと考えた時に、組織として「軸」が必要だと感じました。本を読んだり、勉強したり、多くの経営者と交流を重ねる中で、会社に明確な理念がなければ、これからの経営は立ち行かないと確信したのです。
また、会社が永続的に繁栄するためには、単なる利益追求にとどまらず、事業を通じて社会に貢献する姿勢が欠かせません。
このような思いから、ミッション・ビジョン・バリューを策定することを決意しました。
Singerlyとの出会い
理念を策定したいという思いから、理念策定会社を探していました。そんな中、エックス(旧Twitter)で「ミッション・ビジョン・バリューを策定した」という株式会社麺棒さんの投稿を目にしたのです。そこで、たどり着いたのがSingerlyさんでした。
心をつかまれたのは、「ありきたりな経営理念が会社を潰す」というパワーワードです。SingerlyさんのHPのトップにそう書かれていました。その一瞬で心を掴まれ、ご連絡した次第です。
策定中の思い出
当初、私たちの組織は理念や価値観がないだけでなく、階層化も不十分な未成熟な組織でした。そのため、社員がどのような反応をするのか不安でした。
しかし、奥田さんを中心にワークを進めていくうちに、社員同士の絆が生れました。そして、今までにない圧倒的な一体感と熱意を感じるようになったのです。
コアメンバーによる話し合いでは、一人では到底思いつかないような意見や言葉が飛び交いました。特に、社員から「ヒーローのような会社にしよう」という発想が生まれた時には胸が熱くなりましたね。
策定後の変化
採用活動では、自分たちはどんな会社で、何を大切にしているのかをはっきりと伝えられるようになりました。また、経営姿勢が定まったことで、社内でトラブルや問題が発生した時にも、「私たちが立ち返るべき軸はここだよね」と示したり、社員と一緒に話し合うことができるようになりました。
まだ策定したばかりで大きな変化はありませんが、ミッション・ビジョン・バリューについて説明すると、社員から共感や理解の反応が得られています。
「トラックドライバーになりたかった理由は、横断歩道で止まった時に小学生が手を振ってくれる光景を思い浮かべたから」と共感のエピソードを語ってくれる社員もいました。
株式会社ホシノのミッション・ビジョン・バリューについて
ミッション:思いやりを運ぶ
創業から今日に至るまで、私たちはずっと変わらず「運ぶ」ことをしてきました。では“何のために”、“何を”運んできたのか。
考え抜いた結果、「地域のため」「家族のため」「社会のため」「お客様のため」という”誰かへの思い”だと気づきました。おそらく創業時も、地域貢献の想いがあったはずです。
私たちが運び続けてきたのは単なる「荷物」ではなく、「思いやり」です。そうした想いから、「思いやりを運ぶ」という言葉をミッションにしました。
ビジョン:綺羅星のキセキ
ビジョン:綺羅星のキセキ
「ヒーローのように、憧れられ、社会やお客様から信頼され、頼りにされる存在になろう」という想いを社名にかけて「綺羅星」という言葉を選びました。
私たちは夜空に輝く星々の中でも、ひときわ輝く美しい星になろう。そして、思いやりを運ぶ私たちの車両が街中を走り、残した軌跡によって、人々の心が温かくなって、人や街を元気にする。幸せにする。そんな奇跡を起こしたい−−−−。
これが私たちのビジョンです。
ビジョン:綺羅星のキセキ
私たちのトラックが走った後には明るく輝く軌跡が残り、街道沿いでは、私たちをヒーローのような存在として憧れ、信頼し、手を振ってくれるお客様や地域の人々がいる。そんな光景をイメージして、このビジョンイラストを描きました。
バリュー:
・カネを稼ぐな幸せ稼げ
多くのトラックドライバーは”稼げる”という目先の給料や損得勘定で、この仕事を選んでいます。その現実に対して、私はずっと違和感を覚えていました。なぜなら、仕事の本質は「お金のため」ではなく、お客様や家族、地域の人々など「人の幸せのため」にあるべきだと思うからです。
「カネを稼ぐな幸せ稼げ 」。この言葉は、運送業界に蔓延する損得勘定へのアンチテーゼの意味を込めてバリューに掲げました。
・献身流星群
当社には、まだまだ他人任せ、「自分さえ良ければいい」といった姿勢が見受けられます。しかし、そういった考え方は捨てなければいけません。
みんなのために献身的に働こう、当事者意識を持って主体的に行動しよう。
そんな献身的な気持ちが流星群のように降り注ぐ。それが「献身流星群 」です。
・裏未知ギア
「裏未知ギア」という言葉には、失敗やリスクを恐れず、未知の領域にも積極的に挑戦していこうという思いが込められています。
これからの会社は、同じ事業を繰り返すだけではなく、新たな分野や可能性にチャレンジする姿勢が重要だと思います。それは運送業が「裏道」を探すように、さまざまな道を通り、まだ見ぬ「未知」に果敢に挑戦していくような姿勢です。
私たちは「裏未知」に挑戦するという心のギアを上げていきたいと思います。
コンセプト:「Be a Star Ranger! 」
「Be a Star Ranger!」というコンセプトには、ヒーローのように人々に愛され、憧れられる存在になろうという思いが込められています。
「思いやりを運ぶ」というミッション、「綺羅星の軌跡」というビジョンを決めていく中で、私たちの心に1番刺さったのは「ヒーローのような存在になろう」という言葉でした。
「Be a Hero」というフレーズと、社名である「ホシノ」に由来する「Star Ranger」という言葉を結びつけ、コンセプトに掲げました。
一番気に入っている言葉は?
どの言葉も気に入っていますが、特にバリューの「カネを稼ぐな幸せ稼げ」はインパクトや自分たちらしさという意味で、一番気に入っています。
当社には、「稼ぐに追いつく貧乏なし」という言葉があります。これは「一生懸命仕事をすれば、稼ぐことに追いつける貧乏はいない」という意味が込められた創業者の言葉です。この言葉とも「カネを稼ぐな幸せ稼げ」はリンクしています。つまり、創業者の精神を受け継ぎながら、新たに「人の幸せのために仕事をしよう」という価値観をのせたバリューです。
これから会社のマインドとして、社内に広く浸透させたいと思います。
ミッション・ビジョン・バリューが必要だと感じる瞬間
まずは、採用の時に必要だと感じます。自分たちの価値観や目指す方向を明確に伝えられるため、ミスマッチを防ぐことができるからです。
もう一つは、会社が苦しい状況に直面した時です。そんな時こそ「自分たちは何を目指しているのか」「どこに立ち返ればいいのか」というミッション・ビジョン・バリューが必要になります。それが明確であれば、迷わず一丸となって進むことができるはずです。
Singerlyのミッション・ビジョン・バリューの魅力
Singerlyさんは、他にはないファシリテーションが魅力です。策定ワークでは、メンバーたちがそれぞれ大切にしている想いや価値観を自然に引き出してくれました。そのおかげで社員同士の結びつきが深まり、自分たちらしい唯一無二のミッション・ビジョン・バリューをつくることができたと思います。
その他にも、ビジョンを自分の手で描けたことは良かったです。正直、最初は抵抗感があり、「本当に意味があるのだろうか」と思っていました。また、プロのデザイナーがつくる洗練されたビジョンマップにも憧れがありました。
でも、実際に描いてみると、その意義と効果を実感しました。自ら想いを込めて描いたビジョンを、仲間と視覚的に共有できる。これは強みですし、社内の一体感にもつながりました。
ミッション・ビジョン・バリューがない組織について
会社の中に軸ができると、常にどこに立ち替えるべきか明確なので判断に迷いません。
また、ミッション・ビジョン・バリューがありきたりな言葉ではなく、自分たちらしい言葉であることで、独自の組織文化となり、「私たちは他の会社とは違う」という社員の自信と誇りにつながると思います。