ミッション・ビジョン・バリュー
策定インタビュー
【写真】右:執行役員 本部長 六田 充輝様 左:事業創出推進部 部長 能勢 悟様
背景・課題
実施した背景や課題感
・短期的に収益化が難しく、周囲からのプレッシャーを受ける中で、自分たちの使命や目指すべき姿が明確化されておらず釈然としない状態だった。
・積極的に顧客と向き合おうとするが、自分たちの想いや価値観が定義されていないので、明確に伝えられなかった。
ミッション・ビジョン・バリュー策定の導入効果
・自分たちらしいMVVを策定したことで、コミュニケーションが活発化し、文化への浸透にも繋がった。また自分たちの想いを相手に伝えることが出来るようになり自信が持てるきっかけとなった。
会社紹介
六田氏:株式会社ダイセルは1919年にセルロイド(セルロースを主原料とする合成樹脂)でスタートした化学会社となります。創業から100年以上続いており、事業創出本部はその中で新しい研究開発や事業開発に取り組んでいる部署となります。
Singerly株式会社との出会い
能勢氏:事業創出本部のメンバーの一人が、ある日突然『ちょっと会って欲しい人がいるのです』と言われ『どうしたのですか?』と尋ねると、ミッション、ビジョン、バリューを策定する提案について話してくれました。最初は売り込みかなと思いましたが、『とりあえず話だけでも聞いてみよう』と返事しました。そこで、奧田さんからの提案を聞くことになりました。奧田さんに初めて会った時、話に圧倒されました。とても面白くて、組織の雰囲気を変えてくれそうな面白い匂いがしました。それではやってみようか!っていうことでお願いする事になりました。
ミッション・ビジョン・バリュー
策定前の課題
六田氏:メーカーの方々には共感頂けるかもしれませんが、事業部は基本的に製品を作って売り、利益を得てビジネスを回しています。成果がハッキリと見える中で進めますが、研究開発部門は異なります。研究開発部門は直接製品を売っている訳ではなく、成功もあれば失敗もあるり、その中で投資を進めていきます。そのような状況に他部署からは「研究開発部門は何をしているのか?」という疑問が出ることがあります。外部からの意見はまだしも、事業創出本部のメンバーからも「私たちは一体何をしているんだろう」と感じることがありました。そんなモヤモヤした状況の中で、「ミッション・ビジョン・バリュー」に心を動かされ、「これに賭けてみよう」と思ったのが、私たちのスタートでした。
能勢氏:私たちの部署は、以前は研究開発本部と呼ばれていましたが、名前を事業創出本部に変更しました。この変更の背景には、実験室での研究だけでなく、外に出てお客様と直接話し、そのニーズに基づいた研究開発を進めるという意図があります。メンバーにこの方針を伝えたのですが、すぐに変われるものではありません。お客様の所へ行くことが難しく、行けたとしても上手くコミュニケーションを取るのが難しい状況でした。
お客様と話す際に『私たちはがしたいこと』を分かりやすい言葉で伝える必要がある事と自分たちの想いを明確で理解しやすくする定義が必要だったと思います。
策定中のエピソード
六田氏:ミッション・ビジョン・バリューを策定する過程で、”喜怒哀楽ストーリー”という取り組みがありました。これは、みんなが会社生活の中で感じた強い感情(喜び、怒り、哀しみ、楽しさ)の3つを選んで共有するものです。最初はみんな少し控えめに話していましたが、誰かが本音を話し始めると、たくさんの話が出てきました。僕は、自分がよく知っていると思っていた人たちからも、新しくて意外なエピソードを聞くことができて、この話の連鎖がみんなの中で「あの時はこう思った」「この時はこう感じた」という共感を生み出しました。僕自身も、同じ経験をしたことがあるとか、経験はないけどその気持ちが分かる、という共感をしました。この一連の体験は、新しい気づきとともに非常に感動的でしたね。
能勢氏:喜怒哀楽ストーリーのセッションの後、いよいよミッション・ビジョン・バリューの言葉を練る作業が始まりました。この言葉を出す作業にとても苦労しました。奥田さんからの宿題に取り組む中で、初めて自分なりに「これはいい!」と思える言葉を見つけました。それは「change the future by chemical design」というフレーズでした。これを皆に披露し、当時はそれで良いね、という意見が集まりました。しかし、次の週に奥田さんが「もっといいアイデアを考えてきました!」と言って、「Loid the future by ChemiCell Design」という言葉を提案されました。我々の会社はセルロイド発祥であり、このセルロイド(celluloid)の「Loid(こじ開ける)」と、「Chemistry + Daicel(Cellluid) = ChemiCell 」でダイセルらしい化学という意味となります。「change the future by chemical design」というコンセプトに組み込んだこの新しいフレーズは、私たちにとって非常に魅力的でした。その時「これはもう敵わんな」と感じましたね。
ミッション・ビジョン・バリュー
策定後の変化
六田氏:我々の組織では、様々な人が集まって一つのチームを形成しています。以前は共通点といえば同じ会社に属しているだけ、という感じがありました。しかし、ミッション・ビジョン・バリューを通じて「私たちは同じ価値観を共有している」という実感が生まれ、組織のまとまりが大きく改善されました。この変化により、コミュニケーションも活発になったと感じています。その結果、迷いが少なくなり私たちの行動がよりスピーディーになるようになったと思います。
ミッション・ビジョン・バリュー
が必要だと感じる瞬間
能勢氏:私たちが何かを行い判断を求められる際に、ミッション・ビジョン・バリューを持つことが、最も大きなメリットだと感じています。確かに、誰かに相談したり会議を開いたりすることも大切ですが、ミッション・ビジョン・バリューがあるおかげで、迅速に判断し、事業を進めることができます。このミッション・ビジョン・バリューに基づいて判断することで、組織の足並みが揃い、育成にも役立つと思います。
一番気に入っている言葉は?
六田氏:これは難しいですね。二つの言葉があります。一つ目は“正面突破ギーグ”です。これは、「みんなで正面突破で行こうぜ」という意味を持っています。二つ目は“GIVE ∞ LINK”です。これは誰も気づいていなかったのですが「そうか!ビジネスを作る時はこのように進めるんだ」と気づかせてくれる言葉ですね。
能勢氏:先ほども言いましたけ“ChemiCell Design”です。語呂もよくすごく気に入っています。あと“所作美しく”の生みの親と言われているのですが実は私のオリジナルではないのです。「お客様のところに行った時、所作大丈夫か?」と言われたのがきっかけで、この言葉をぜひこの事業創出本部のバリューに入れたいなと思って所作という言葉を入れさせて頂きました。
Singerlyのミッション・ビジョン・バリューの魅力
六田氏:これは従来の講義形式とは違うアプローチなところですね。先生がいて、何かを教えてくれるわけではありません。むしろ、奧田さんがファシリテーションしつつ、みんなが和気あいあいと交流しながらコミュニケーションを取り合う中で、新しい何かが生まれてきます。これがSingerly流のやり方だと思います。
ミッション・ビジョン・バリュー
がない組織について
能勢氏:多くの部門や会社には、ミッション・ビジョン・バリューと、目標や年、目標や年度のゴールがあると思います。しかし、ミッション・ビジョン・バリューをしっかりと定めていないと、それが組織全体に浸透するのは難しいでしょう。ミッション・ビジョン・バリューが明確でないと、組織の足並みも揃いにくく、活気も生まれにくいと感じています。